【プロフィール】
北根香織 Kaori Kitane
大阪外国語大学国際文化学科卒業、カナダマギル大学政治学部修士課程修了。その後、NYで4年間仕事をした後、帰国。都内のIR支援会社で3年半翻訳コーディネーターとして英文編集から翻訳まで幅広く仕事をした後、2008年よりフリーランス。

*語学に興味を持たれたきっかけについて教えてください。

中学生のころに母親から地元の個人経営の英語塾に半ば強制的に(笑)行かされまして・・・その塾の先生に高校1年生の夏にホームステイに連れて行ってあげます!と言われそれに母親が行かせてくれたんです。その時にカナダのバンクーバー郊外に行きました。そこで当時の私のレベルの英語が通じなかった経験をしました。カナダの一般家庭で過ごしたのですが、まったく英語が通じず、すごくショックだったと同時に悔しくて「この言語を絶対にマスターしてやる」と思いました。高校では英語科に通っていたのですが、それもその学校の制服が可愛いから受験したというのが動機だったのですが(笑)
ホームステイから戻り、そこからは本当に英語を勉強しよう!と思ったことがきっかけでした。でも、その時は「英語で何かをしよう!」という感じよりはとにかく英語を話せるように、理解できるように、とその気持ちだけでしたね。

*その後大阪外国語大学に進まれたのはその気持ちの延長からですか?

実はそんなことはなく・・・(笑)気付いたら外大に通っていた、という感じでした。
3年生の時にイギリスの大学の政治学部で1年間勉強しました。それまでは北米しか行ったことがなかったのでイギリスの英語に最初慣れなくて授業では少々苦労しましたし、カルチャーショックも大きかったですね。帰国後、大学を卒業し以前から決めていたカナダの大学院へ進む準備をしました。大学院では政治学を学ぶ予定だったのですが、外大出身だった私はすぐに大学院の政治学部への進学が認めてもらえず、まず政治学の学部レベルの授業を1年間取った後に大学院へ進みました。この大学院時代が今の自分の英語力の基礎を培ってくれたと思います。自分の英語に自信が持てるようになった、という感覚でしょうか。

*翻訳をご職業にしようと思ったのはいつからでしょうか。

前職ではIR支援会社の英文編集部で翻訳コーディネーターとして、英文チェック、翻訳などの業務にも携わり3年半勤務したのですが、その時にこれで食べていけるかもしれない、と思った頃でしょうか。
初めての業界だったのですが、私が主に携わっていたのはアニュアルレポートの作成にかかる業務やそれ以外のIR関連の翻訳物でした。

企業が取り扱う多くの社内資料や対外資料を目にすることも多く、特に会社の経営に対する姿勢や考えに触れることができました。消費者としての自分の視点ではなく、企業側の視点を知ることはすごく楽しかったですし、勉強になりました。私、実は飽きっぽい性格でして(笑)その性格を考えると色々な分野の翻訳を考えたときにIR関連の翻訳なら自分に向いていて長くやっていけるのかな、と思いました。
とにかくその3年半に色々な経験を通して、自分に向いていて楽しみながらやっていける仕事は何だろうかと考えました。

*ご家族の方の転勤がきっかけで3年半勤務された会社を辞め、現在のお住まいに引っ越されてから早速フリーランス翻訳者としてお仕事を開始したのですか?

いいえ(笑)翻訳の勉強をきちんとしたことがなかったのでまずは心の準備として(笑)翻訳のコースを何かひとつ勉強をしてみようと思い、通信講座を受けました。本当にこれでやっていけるのか?と不安に思いながら(笑)と、同時に今もつづけているのですが、前職の仕事のお手伝いをしていました。

トライアルって受けるの・・・・私は怖かったんです。拒絶される、じゃないですけど顔の見えない相手と言いますか会ったこともない人に紙での提出物だけでジャッジされるというのは・・・・面接でダメならまだあきらめもつきますが(笑)とにかく怖い、という気持ちがありました。落ちたらどうしよう、という気持ちがありなかなかフリーランスでやっていこうという最初の一歩が踏み出せなかったんです。
前の会社からお仕事をいただけるという有難い状況にはあったのですが、やはり甘えてばかりではいけない、新しいところも開拓していかなければいけない、と自分を奮いたたせ(笑)何社かトライアルを受けようと思って受けた最初の1社がテンナインさんだったんですよ。(ありがとうございます!!)

*北根さんにとって翻訳の面白さはどこにありますか?

前の会社に入社したての頃は、私の翻訳へのイメージは「1語1句翻訳する」というものでした。でも、IR関連の資料だと、例えば企業トップのメッセージのような原稿の翻訳の場合、日本語と英語はもちろんあっていて、どちらもスラスラ読めるのですが、1語1句同じではないんですね。私は翻訳はそういうものであってもいいと思っています。読む人にきちんと伝わる、書き手が何をきちんと伝えたいか、それを正確に伝えられていれば1語1句あっている必要はないのかな、と思っています。もちろん、決算短信のような翻訳は1語1句あっていなければいけないですが。読み手を想像して作業をしていく、ということが私には凄く楽しいですね。また、その過程でぴったりくる英訳や和訳を工夫していく作業は本当に楽しいです。
逆にぴったりくる翻訳がなかなか出ないときは苦しいです(笑)新聞を読んでいる時に参考になる文章や言い回しがあると家でも外でも(笑)新聞に印をつけてしまいますね。

*翻訳の合間のリフレッシュ方法はありますか?

現在の住まいの周囲に山や緑が本当に多いので目の保養のために風景を眺めることですね(笑)もうひとつは・・・・私実はすごくテレビっ子でして(笑)しかも海外ドラマばかりを見ています。全て録画してそれをため込んで一気に見ます!「生きた英語に触れる」ためです(笑)
一日中パソコンに向かっていると朝に読む新聞以外は活字を見たくない!と思ってしまうんです(笑)テレビのリモコンの電池がすぐになくなるんですよね!
そして、週一回のテニスです。それを目標に仕事をしてるとも言えます。フリーになって特に曜日の感覚がなくなってしまったので自分の中でスケジュール管理をするためにも週一回のテニスは欠かせません。

*今後の目標を聞かせてください。

私自身いまだプロの翻訳者だとは思っていません。まだまだ駆け出しの身ですし、上手な方はもっとたくさんいますから。
翻訳には答えがないとも考えています。翻訳には客観的な視点からの「正解」がない、あるいは「正解」は一つ以上あると私が主観的に思っているだけなのかもしれませんが。
今後の目標としては自分の中で、「翻訳をやっています」と周りに自信を持って言えるまでになりたいですね。
お客さまに「この人に任せたら大丈夫!」と思っていただけるのもひとつですが、一方でお客さまに「これは違うんじゃないか」と言われたときに「そんなことありません」ときっぱりと言えるくらいまで、自分の造るものに対して自信が持てるくらいに、がんばりたいです。そこまでの道のりはまだまだ長いですし、辿りつけるかどうかもわかりませんが(笑)

*最後に翻訳者を目指している方たちへメッセージをお願いします。

「最初の第一歩」をどう踏み出していいのかわからない人や、以前の私のように怖い気持ちを抱えながらいつまでも勉強だけ続けていく人などもいると思うのですが今の私が言えることはとりあえずトライしてみる、ことです。向き、不向きはもちろんありますがまずは始めてみないとわからないことですし。私の場合、こうやって御社とお仕事をさせていただいているのも何かの縁だと思っていますし、今の自分の実力以上の、タイミングや縁も絶対にあるからです。だから是非思い切ってトライしてください!

【編集後記】
日英・英日どちらにも定評があるエージェントにとって本当に心強い北根さん。気取らず、飾らず、気負わずで、等身大のご自分をさらけ出していただいたようなインタビューでした。コーディネーターの経験もお持ちなので翻訳すること以外にも付随する手間を惜しまずにこちらの立場にも立って納品していただく姿勢は本当に頭が下がります。思い切って踏み出された最初の一歩が弊社との縁だったという言葉は本当に嬉しかったです。ありがとうございました。そして、今後ともよろしくお願いいたします!


 

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