2010年9月アーカイブ

【プロフィール】
奥陽子さん Yoko Oku
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ITの会社でシステムエンジニアとしてご活躍された後、翻訳者として転職すべく2005年よりISSに入学。卒業後2年半のチェッカー経験を経て2009年よりフリーランスとなる。
また、現在弊社に週1回ご来社いただいてチェッカーのリーダー的存在として他のチェッカー、私たちコーディネーターからも絶大な信頼を得ている。

Q. まずは奥さんが語学に興味を持たれたきっかけはなんですか?

奥:大学3年生の時に1週間かけてシベリア鉄道に乗って旅をしたことがきっかけでした。そこにはヨーロッパ、アジア、アメリカなど世界各国から来た様々な人が乗車していて、とても国際色豊かな雰囲気だったことを覚えています。

滅多にない機会なので、「今日はイタリア人と話そう」「明日はドイツ人と!」といった感じで多くの国の人と交流する時間を過ごしました。当時の私の英語力ではたいした会話もできなかったのですが、それでもその時に「英語ってやっぱり世界共通のコミュニケーションツールなんだな」と身に沁みて感じ、流暢に英語を話せなくてもいいからある程度英語ができれば色々な国の人とコミュニケーションがとれるんだ!と思い帰国してすぐに英会話学校に通いました。ただ、私は帰国子女でもなく、海外留学の経験もないので、英語で仕事を、というよりは、単なる「趣味」として考えていました。

Q.奥さんとは週1回顔を合わせて色々な話をしていたつもりですが、シベリア鉄道がきっかけだったとは驚きです。そんな事から端を発して関わるようになった英語、つまり翻訳を仕事にしようと思われたのは?
奥:前職でITのエンジニアをしていたのですが、IT系のマニュアルはアメリカ発の英文が多く、またそれらを翻訳された文章を読むことも多かったんです。色々目にするうちに「このくらいの内容だったら自分で翻訳できるかな?」と思う時がありまして(笑)ぼんやりと「翻訳を仕事にするのもいいのかな?」という気持ちが湧きました。

多くの方もそうだと思いますが、仕事って始めて2〜3年経つとなぜか仕事を辞めたくなるというか、「本当にこの道でよかったのか?」と思う時期がありませんか?(笑)、私はそういう時期にIT以外のスキルを身に付けたくて、それまで細々と続けていた英語を集中的に勉強したことがあったんです。その時は結局転職には至らず、そのままエンジニアを続けたのですが。

Q.最初から翻訳だったんですね。通訳をするということはあまり考えなかったのですか?

奥:これは、自分のコンプレックスかも知れませんが、帰国子女の友人の流暢な発音を耳にするとやはり通訳は私には向いていない、というかハードルが高いように感じていました。一時期、通訳の勉強もしていましたので、通訳には通訳の面白さがあって、“人と人を繋げている”という感覚が直に感じられるのはいいなと思いますが、一方で翻訳には文章を突きつめていけるというか、単語の選択や言い回しをあれこれと考えたり、難しい原文を理解するために様々な資料を調べたりする作業工程に魅力があると思っています。

Q. さらっとエンジニアとして働きながら英語の勉強を続けていらっしゃることを話していただいてますが(笑)その勉強方法をお伺いしたいです。翻訳者になるための勉強はどのようになさっていたのですか?

それが…私は最初勘違いをしていたのですが(笑)とにかく英語力を上げれば、英語を極めれば翻訳ができると思っていました。それで、とにかく英語の勉強、身近なところでまずはTOEICの点数をのばしていけばいい!と(笑)

私のその頃のTOIECのスコアは700点くらいでした。ITという狭い世界では700点くらいだと「多少英語できるよね?」のレベルだったのですが、いざ転職情報を見ると「翻訳者募集!TOEIC900点以上から」という現実を知り、「あ、今の実力では何もできないんだ」とわかりました(笑)。

エンジニアを辞めてからしばらく文法を中心に集中的に勉強をして、結果としてスコアだけは条件を満たすようになってきたのですが、いざ応募するとなった時、「あれ?翻訳って何だっけ?」「私って翻訳できるんだっけ?」という思いが湧きまして(笑)

例えば、英文を読んで頭では理解しているのですがいざそれを日本語にしようとする上手く書けない、またはすごく時間がかかる、という壁にぶつかってしまいました。その時に英語を勉強することと、翻訳を勉強することは全く違うことに気づいんたんです。よくよく周りを見渡すと英会話学校とは違う、「翻訳学校」というものがあり(笑)それでISSに通い始めました。学校に行って「翻訳ができることと英語ができることは違う」と改めて理解しました。先生にもはっきりと言われましたね。「英語ができるからといって、翻訳ができるとは思わないでください。もし英日の翻訳をしたいのであれば英語5割、日本語5割両方とも同じくらいできるようになってください。母国語が必ずしもできるとは思わないでください。だからみなさんは英語も日本語も磨かなければいけない」と。これは余談ですが、ハイキャリアのリレーブログの「いぬさん」は恐らくそのときの先生なんですよ!
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Q. そういう経験を経て現在フリーランスとして歩まれているのですが、翻訳の面白さはどこにありますか?

奥:正直なところ私自身はまだまだ駆け出しのフリーランスなので翻訳の面白さを感じている余裕はありません。学校で学ぶのとは違って、実際の仕事の現場では納期に追われて必死で原稿と格闘することばかりです。ITのエンジニアの経験があるのでIT分野の内容に接すると懐かしい気持ちになり、エンジニア時代の目線になってマニアックな面白さを感じるくらいのことならありますが(笑)

ただ言えるのは、英語、スペイン語、韓国語など様々な言語が世界中にありますが、それらの言語はそれぞれが独自の成り立ちを持っています。翻訳はそれらをなんとかしてつなげていかなければならない作業です。それは辞書があるからといってできるものではありません。単純な言葉の置き換えでは「通じない」ので、言語の特徴や文化を含めたところまで考えて翻訳ができると面白いと思います。納期がなくて好きなだけ考えたり、文献を調査したりして翻訳ができればすごく楽しいかもしれませんね(笑)

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Q.では、チェックの面白さはどこにありますか?

奥:色々な人の訳文を原文と突き合わせて見ること自体が単純に楽しいです。人それぞれの個性が反映されていて翻訳は画一的なものではないということをつくづく感じます。その翻訳者さんの世界、頭の中とでも言うのでしょうか、それが垣間見ることができるという感じでしょうか。

また、私個人の考えですが、チェッカーと翻訳者は全く別の職種じゃないかと思っています。例えばそれは、編集者と作家のような役割と違いと言えばわかるでしょうか。チェッカーとなって4年経つのですが、当初はチェッカーとして色々な訳文を見て勉強して、次のステップとして翻訳者になろうと思い描いていたのですが、やればやるほど違う職種であることを実感しています。それぞれに求められるスキルが違うというか。

Q. 翻訳者として失敗談があれば聞かせてください。

奥:まだまだ経験が浅いので、語るほどのものはないのですが、フリーランスになって2番目にいただいたお仕事で「ハリウッドスターの座右の銘集」という英訳がありまして…、
これはもう全くダメでしたね(笑)「〜〜〜〜byトム・ハンクス」「〜〜〜〜〜by ジュリア・ロバーツ」といった感じで、ひとつひとつは1行くらいの短いものだったんですが、大失敗しました(笑)。話し言葉を訳すには、ビジネス文書のような整った文章の翻訳とは違う工夫や技術がいると思うのですが、当時の私には難しすぎて、いわゆる「字面のまま」訳してしまったんです。これはクライアントからフィードバックがきました。翻訳の難しさを改めて知ることができた案件でした。その作品今日持参すればよかったですね(笑)

Q. 翻訳、チェックとフル回転ですが合間のリフレッシュとして何かされていますか?

奥:これと言ってありませんが1日1回必ず外に出ることですね。最長で6日間自宅にこもったこともありますが(これは弊社からのチェック案件でした…)、納品後1時間ほどは念のため自宅待機して、その後、大抵夕方が多いですが仕事とは全く関係のない本を持ってカフェに行ったりして時間を過ごします。1日1回翻訳から一度距離をおきます。そうすることで出てこなかったいい訳文がパッ!と浮かんだりすることもたまにはあります(笑)

Q. 奥さんお勧めの勉強方法はありますか。

奥:2つあります。ひとつは、これは私にとってなのですが、翻訳学校時代の仲間たちと月1回集まっての勉強会です。色々なバックグランドを持った12〜13人が集まって一人が出した課題に対して自分の翻訳を持ち寄るのですが、翻訳者にあまりないと言われる横のつながりも感じられますし、他の人の訳文を見ることが勉強になり、何よりも大きな刺激になっています。

もうひとつは、翻訳学校で色々な先生に何度も言われてきたことで、「英文もしくは和文をひたすら書き写す」ことです。私は、「写経」と呼んでいますが、この方法はネイティブの友人に英文の上達法を相談したときも同じ答えが返ってきました。英語にしても日本語にしても、文章の上手なエッセイストや小説家の書いたものを書き写すだけで随分勉強になるので本当にお勧めです。やっぱり基本が大事ということですね。

Q. 最後に奥さんの今後の目標を聞かせてください。

奥:難しい質問ですね(笑)目標がないということではないのですが、具体的に何かを考える以前に、チェッカーとしても、翻訳者としても英語力、日本語力ともにもっともっと磨いていかなければいけないと思っています。とにかく勉強あるのみですね。敢えて目標を掲げるとするなら、以前翻訳学校の先生にも言われたことですが、読み手にあわせて色々な文章が、例えば柔らかいものから硬いものまで、書き分けができる翻訳者になることです。


編集後記
クールな外見と話し方とは裏腹に時には「なんでやねん!」と関西出身の片鱗も見せていただき非常に楽しい充実したインタビューでした。翻訳とチェックに対する秘めた情熱を元SEらしい理路整然とした語り口調でお話しいただく姿がなんともかっこよかったです。「翻訳者としてはまだまだスタートラインに立ったばかりですし、海外生活や留学の経験もない私のようなものが参考になるようなことを語れるでしょうか」と何度も謙遜されていましたが、本当に内容の濃いお話しありがとうございました!

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