現場での経験を大切に

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【プロフィール】
小林克子さん
Katsuko Kobayashi
桜美林大学文学部、英語英米文学科を卒業後、就業先にて社内文書の和訳・英訳を担当。2006年には米国公認会計士 (CPA)を取得、その後、2007年よりフリーランスの翻訳者として、経営、監査、会計、財務関連の資料や報告書などの金融分野を中心に、さまざまな翻訳案件にて活躍中。その正確な原文読解力と翻訳力をもって日英・英日翻訳にて高い評価を得ている。

Q. 翻訳に興味を持たれたきっかけについて教えてください。
私は高校まで栃木県宇都宮市で過ごしました。大学は東京でしたが、栃木は東京に比べてやはり田舎で、幼少のころに語学に触れ合うような機会は少なかったのですが、小学6年生のときに通っていた学習塾で、ほかの子達より少し早目に英語を学び始めることができました。本当に子供向けの英語でしたが、例えば動物の名前など単語レベルで、それに筆記体(今は筆記体を習わないみたいですけど…)もちょっと早めに習うことができたんです。そのお陰で、中学に入ってもスムースに英語の学習を始めることができました。

私はあまり活発な方では無く、本を読んだりすることが好きなタイプで、国語や英語が好きでした。英語は一生懸命勉強していたと思います。ちょうど高校の夏休みに、トム・ソーヤの冒険を訳す、という宿題が出たんです。作業は大変でしたが、とても楽しめました。また、英語をそのまま訳すと凄く不自然な日本語になってしまうので、翻訳には技術が要るんだな、と感じました。高校生のころは、英語が好きだったこともあり、 “百万人の英語”というラジオ番組を聞いたり、NHKの英語講座やセサミストリートなどのテレビ番組を見ていました。

そのころ、大学は間違いなく英文科に行こう、と思っていましたね。中学の頃は国語の先生になりたいと思っていたこともありましたが、高校に入ってからは、興味は国語から英語に移っていました。とはいえ、語学は表裏一体と言いますか、国語が好きだったから英語に興味を持てたのかもしれません。

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Q. 翻訳をご職業にされようと思われたのはいつ頃でしょうか?
大学の英文学の授業は非常に楽しかったのですが、大学卒業と同時にすぐに実践で使える英語が身に着いたかと言えば、そうではありませんでした。大学卒業後は通信教育の学校で勤務しましたが、社会人になって初めて一生続けられる仕事を持ちたいと感じるようになりました。とりあえず、不十分ですが私の中の特技(?)である英語を使った仕事のなかで自分に合う職業に就きたいと思い、派遣での仕事をスタートさせました。プロジェクトのアシスタントや秘書業務などを経験する中で、翻訳に向いていることが分かり、仕事に占める翻訳の量を徐々に増やしていきました。

Q. 米国公認会計士(CPA)の資格をお持ちで、金融分野の翻訳をご専門にされていますが、資格を取られたことは翻訳をされる上でどのように役立ちますか?
私の場合、金融のバックグラウンドが無かったんです。例えば、コンピューターのプログラマーがIT関連の翻訳者さんになったり、製薬会社で勤務されていた方が医薬翻訳者になるというケースがありますが、私の場合、金融の知識が乏しい中で金融関連の翻訳をしていたので、英語で会計の知識が身に着くということにも魅力を覚え、CPA取得に向けて勉強をはじめました。試験勉強の途中で試験の制度が変わったりして大変だったのですが、CPAは会計だけでは無く、監査、ビジネス法務や税務等の分野も試験の対象で、広範かつ体系的な知識が役に立っています。金融庁監査や内部統制関連の翻訳の仕事などもあったのですが、そういったときにはやはりCPA取得のために勉強したことが役立ちました。翻訳の際に、当然分からないことも出てきますが、何を当たれば手がかりが得られるかという検討を、より効率よくつけられるだけでも違います。

Q. 翻訳の仕事の面白さについて教えてください。
例えば英訳ですと、日本語の原文を読んで英語にするわけですが、日本語原文を読んだ際  
に描くイメージ(=または書き手が伝えかったこと)と、英訳文で読んだときに湧いてくるイメージとが合致していると、凄く気持ちがいいですね! それが翻訳者の役割だと思います。言語が何であろうと、書き手が伝えたいことを正確に読み手に伝えるように訳すということが大事です。オンサイト時代に、「ここは曖昧にして訳して」など、翻訳時にリクエストを受けることがありました。日本語と英語の性質の違い上、曖昧に訳す、というのは凄く難しかったりするのですが、それでも、できるだけ話し手、書き手さんの立場に立って翻訳をするようにしました。

Q. 失敗談などございましたら教えてください。
日々慎重に作業をするように心がけておりますので、それほど大きな失敗はありませんが、オンサイト中心で活動していたとき、たまたま在宅のお仕事を頂いたのですが、今ほど環境が発達しておりませんでしたため、私は未だファイルの圧縮技術を知りませんでした。
普段ですと、どちらかのサーバーにアップして終わり、ということが多かったもので。実際、納品時間が来てメール送信したのですが、何度やっても送信エラーになってしまいまして…最後はフロッピーでしたか、CDRでしたかにデータを入れて、プリントアウトし、実際に届けに行きました。会議が始まる直前に何とかお渡しできたという経験がありますね。

Q. もし翻訳者になっていなかったら?
この質問は初めてされましたので、面白いな、と思って考えてみたのですが、旅行誌の編集の仕事に携わっていたのでは、と思いますね。編集という作業が好きなんです。どちらにしても、文字に関わっていたい、という気持ちはやはりありますね。

Q. 翻訳の合間のリフレッシュ方法は?
息抜きは料理の本を見ることです。料理も好きです。そんなに毎日手の込んだことはできませんが、材料を揃えていつか作ってみよう、などと計画を立てています。

Q.今後の目標などございますか?
これからもずっと、翻訳にかかわっていきたいですね。長く続けられる仕事ですのでマイペースでやっていきたいと思います。

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Q.翻訳者を目指している方に向けてのメッセージ・アドバイスをください。
翻訳者になるには、やはり現場になるべく早く出て、少しでも多くの経験を積むことが近道になると思います。最初から派遣先で100%翻訳のお仕事を頂けるということは難しいと思いますので、秘書、アシスタントなど、とにかく現場に出て、仕事の内容や、使われている言葉を良く理解することです。自分の将来のためになると思って、現場での経験を積むことは本当に良いと思います。業務の内容を知ることが、正確な訳出の力となります。一つも無駄になるようなことはありませんので、現場の経験から知識を吸収していく機会を積極的に得て下さい。実務翻訳を目指すのであれば、現場に出て無駄になるようなことは一切ありません。辞書に載っていないこともたくさん学べます。肝心なことに限って辞書にもネットにも載っていないのですが、現場でしたら、聞くことができます。たくさん読んで情報収集することも大切です。就職難の中、現場を知ろうとして応募しても、経験が無いから採用されないという厳しい状況が続いていますが、現場は宝の山ですから、あきらめず、チャンスは逃さないよう、積極的に頑張ることが大切です。


編集者後記:
普段は栃木県にお住まいのため、今回のインタビューのためにお越し下さったことで初めてお目にかかれたのですが、普段、どんなお時間にお電話してもすぐにご対応下さるときの、あの優しい声、そしてその声の通り落ち着かれていて、着実にお仕事に取り組まれる小林さん。豊富な経験に裏付けされた翻訳力が魅力です。これからもどうぞ宜しくお願いいたします!

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このページは、ten-nineが2010年6月 9日 11:08に書いたブログ記事です。

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